2章 文化的背景
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先行研究
工学や理学で「かわいい」に関連した著作物は見つからなかった 文化論的な先行研究
身の回りを取り巻くファンシー商品について紹介し、その次代的な必要性について解説
外国人女性による日本の文化論
手書き文字や話し言葉、ファンシーグッズ、ファッション、食べ物、アイドルなど種々の対象を扱っている
これらの対象と「かわいい」という価値との関連を直接論じているわけではない
外国人男性ジャーナリストによる日本のビジネス論
ハローキティを中心とした「かわいいキャラクタ」が議論の主な対象 日本人男性による著作
「かわいい」という言葉を真正面から取り上げているが、「かわいい」という言葉が主に女性に対する形容詞として扱われている
「かわいい」に関する共通認識
日本発の感性的な価値である
「愛くるしい」「すてきな「愛らしい」などの前向きな意味を持つ
欧米では成熟したものを価値として認める文化があるのに対して、日本では未成熟なもの、これから成熟期を迎えるものにも価値がある
早春のフキノトウやタラの芽、桜の花芽のほころびかけたところなど
このことが未成熟で「守ってあげたい」という気持ちを起こさせる対象に対して価値を認める素地を形成していると考えられる
平安時代
爪に歯を手ている子どもの顔
雀の雛に向かって「チュッ、チュッ」と呼んでやると、こちらにピョンピョンやってくること
3歳ぐらい」の子どもが地面に落ちている小さな変なものを突然に見つけて駆け出すと、小さな手で掴みとり、大人のところにもってきて見せる様子
尼のような頭の少女が、目に被さる髪をかきあげるのではなく、顔を傾けて物を見る様子
水に浮いている蓮の葉
瑠璃の壺
江戸時代
清少納言の枕草子の「かわいい」という感性価値は浮世絵や根付など、広く日本文化の底流として支えてきたように思われる 実際、江戸時代には「かわいい」という感性価値が確立していたと考えられる
東京都府中市美術館の企画展示「かわいい江戸絵画」の図録
明示時代以降
「かわいい」という形容詞の対象の多くは、以下に限定される傾向が強くなった
子ども・少女・小動物などの生物
それらの顔の表情やしぐさ
それらの模倣品
それら模倣品の表情やしぐさ
このことから「かわいい」という形容詞が人工物の「価値」であるということがあまり意識されなくなったようだ
上述のような文化的背景から「かわいい」という感性価値は、日本のユニークな文化的財産と言える
現代日本において「かわいい」という形容詞の使用法の予備調査を行うことにした
女性に対する限定的であるのか人工物も対象として含まれるか
四方田犬彦は「かわいい」という形容詞を限定的な使用法で捉えており、その男性中心視点の解釈には違和感 島村氏の著作では人工物も対象として含まれる